「エア、率直に言わせてもらうが」俺は階下で何やら盛り上がる声に合わせて口を開いた。「こいつらはクソだ。どうせまた誰かとどっかで仲違いして殺し合いをおっ始めるんだよ」
企業連中が残していったぼったくりの煙草が、指の間で縮んでいく。残された灰は重力に負けてはらりと落ち、手摺りの錆へ重なった。並ぶ文字列が想起するのは一人の男の思い詰めた声色で、思想的に根無し草のまま戦うことを繰り返し戒めていた。きっと誰も一人の人間としてのこいつのことを覚えちゃいない。俺だってそうだ。英雄ぶって言い訳ばかりを求めていた哀れな捨て駒の本当の顔を知る機会など、これまでもなかったしこれからも訪れない。明るい酔いの色を乗せ、また人の輪が沸いた。俺の頭にも得体の知れない微生物が湧いている。そいつは悲観的になった相棒を宥めるように言い聞かせる。レイヴン、きっと違った未来を切り開いていけるはずです。すっかり無駄にしかけた煙草を咥えて、思い切り息を吸い込む。まだ馴染まない新しい気管支が、これを嫌って抵抗した。咳き込めば下の連中の目が二、三組向けられる。どいつの瞳も若く澄みきってきらきらしている。視線を避けるのに一番いいのは、こっちが目を閉じてしまうことだ。俺はそうした。そうした上で、苦しいふりをして頭の中の相棒への返事を誤魔化すと、瞼の裏の赤い暗闇に逃げ込んだ。一度燃え盛り、永遠に燻り続ける一面の炎、もう選べない選択肢。養い親の言う通り、全部焼いちまうべきだったんだ。そうすれば俺の罪と引き換えにして、お前もこいつらも他の馬鹿共も天国に行けたはずだ。
鋭い痛みが感情的な物思いを現実に引き戻す。取り落とした吸い殻は幸い、あるいは不運にも、誰の目も焦がさなかった。指先に残った火傷が、長引きそうなトーンで痛んだ。