まことの国で

 私のきょうだいは私以外みな事故で死んでしまった。あの頃不在にしていたのは私の方だったのに、ある一瞬を境にしてすべてが逆転してしまったのだ。もう兄のお小言や弟の嫌味を聞くことはなくなって、妹の強情さに腹を立てることもできなくなった。一人ぼっちになってしばらくは悲しみに暮れたけれど、時は悲しみを和らげる唯一の薬で、次第に喪失感は私を手放し去っていった。私は彼らの名の刻まれた墓石の前に佇んでは、このけがれなき魂たちがこの世をなでていくあらゆる災いや苦しみから隔てられ、あの幼い日々に彼らが(そしてかつては私が)遊んだ不思議と幻想の世界に安らいでいることを──彼らのまばゆいままの心がはじまりの日々に与えられた永遠の玉座の上で、偉大なライオンの庇護のもと、彼らの美徳が決して軽んじられ無視されることのない国にあることを、想うのだった。時が経つにつれ、私の足は何度となく通った墓地への道を忙しく踏まずに済むようになり、それは次第に日を、月を、年を置くようになった。やがて私はありふれた女の子の人生を結婚というかたちに落ち着けて、そうあれかしと定められた流れに沿って子どもを産んだ。目まぐるしく追い立てる生活の嵐に揉まれながらも、娘はこの上なく愛おしく、息子は成長するごとに喜びを与えてくれた。二人にはそれぞれに、どことなくきょうだい達を思わせるところがあった。それで私は彼らが棺の中でも夢の王国でもなく、ここにいてくれることを知った。
 もしもの世界では、私はまだ彼らの冒険に付き合って、王子や魔術師や奇妙な生き物たちを相手に、イブのむすめとして、優しの君として豊かに息づく自然の中を歩いていた。影のない絵の中で微笑む私は美しい。
 だけれども、ごみごみした街中を足元のくずや行き交う人の肩を避けながら進んでいって、その週の献立と懐具合とをすり合わせながら、食べ盛りの子どもたちと働き詰めで不機嫌な夫を満足させる量の食べ物を両手に抱えて帰るのだってそう悪くはない。鏡の中の私はそろそろお化粧では誤魔化せないような皺にまみれはじめていたし、ほつれた髪には白髪がいくつも見つかった。先月はぱりっとしていたシャツの襟はよれ、いつの間にやら何かの染みが点と灯され、存在感を放っている。それでも、弱った電球の淡い影の中で微笑む私は、絵の中の女王に劣るところなく、美しかった。