小人閑居して不善を為す

 イズカイアには人をおかしくする粉でも飛んでるのかってくらいに、俺の頭は飛んでしまった。夜になるとヨスタトはモーテルで好きなだけ安酒を呷って寝てばかりいるし(年寄りだからな、というのは本人の台詞)、仕方ないから一人で若者らしく街をほっつき歩いている訳だが、このサイドショーむきのツラは結構夜遊びにもむいているらしかった。金持ち観光客との一夜どころか数時間かぎりの関係を楽しんで、朝になる前に戻る。ヨスタトがベッドでなくソファの端で丸まっているのを横目に部屋を横切り、真っ暗なままシャワーを浴びて、俺は自分のベッドで眠った。これが連日連夜続いている。自分がここまで色狂いとは思わなかったが、後腐れなくちやほやしあえる人付き合いは楽しいもんだ。夫に内緒で遊びに来て友達と年下漁りに興じている女弁護士とか、卒業旅行を満喫しているバイセクシャルの学生二人組とか、夜遊びに憧れた大富豪の一人娘(これは流石に気をつかった)とか、それぞれといい時間を過ごしたが、中でも最高だったのは写真集のためにあちこち撮りまくっている鳥好きの女だった。俺は知っている鳥の名前を残らず挙げて、彼女の耳元でお気に入りのさえずりを口笛で吹いてやった。かわいい小鳥は編み込みのせいで縮れた髪と豊かな胸を揺らして笑い、俺の肩をそっと唇でついばんだ。それから少しお互いの話をした。彼女は婚約者を年寄りのヨウムに喩え、俺は元上司を連れ合いをなくしたふくろうに喩えた。