南の国の夜はいい。庭の愉快な仲間たちは静寂とは無縁のやかましさでわめきたて、眩しいほどの星明かりが真闇に独特の密度で流した青は、汗ばむ一時にちょっとした趣を足してくれる。この色の中では、ヨスタトの首から胸にかけてぶちまけられた凹凸は繊細なレース編み、ニレのどの母親のクローゼットにも眠っている花嫁衣装のヴェールに似ていた。本人に言えばお楽しみも台無しになる。彼はそういう冗談を好まなかった。それどころか、たった今しているような性的な悪ふざけそのものが嫌いだった。俺がヨスタトの体温をより深く味わうために身動きすると、彼はこめかみをシーツの上へを押しつけて喘いだ。感じたからじゃない、詰めていた息が緊張している喉の隙間をすり抜ける時の音、それだけのことで、こいつは俺に抱かれる時は(俺を抱く時は)いつも苦しがっている。肌を重ねるたびに遠くなっていくってのは皮肉な話だ。欲しくもない俺を受け入れて好き放題自分を食わせてやっているヨスタトの忍耐は、一体どのあたりまで続くんだろうか。今夜が最後かもしれないし、一生このままかもしれなかった。
俺は彼の頬骨のあたりにキスをして、一度だけ名前を呼んだ。うっとりするような甘い曲線が開かれて、薄い皮膚の隙間から淡い無彩色の瞳が覗く。ヨスタトは決して俺の名前を囁き返したりしない。額のほうから頭を撫でて、また違う適当な場所に口づけを落とす。灰色の視線がゆっくりと追いかける、たった今この瞬間性的に関係している恋人でも何でもない男の、醜いケロイドの畝を這う。
「なあ、あんたさ、俺のものになれよ。俺はこの世の誰よりあんたをかわいがってやれるのに……」