ほんの一、二年前までは親友が泣くところを見たことなんてなかったのに、今はほとんど毎週見ている。ジルは週末になると信じられないくらい遅い時間に、信じられないくらい酔っぱらって帰ってきて、信じられないくらい頼りなげで幼い仕草で私のベッドに入ってくる。ジルが私にすがりつく様子は、センスのない人なら恋人にするのと変わらないなんて言うだろうけど、それは小さな子が寂しがってベビーシッターに甘えるのにこそ似ていた。前に一度アルバイトでやった時の子は両親が離婚したばかりで、普段はしっかりしていて周りを心配させない子だったけれど、お昼寝のあとは必ず泣いていて、出ていったお母さんを恋しがって私に抱っこをせがんでいた。酔ったジルもきまって泣いていた。今もそう。
「ネル、ヨスタトに会いたい。ヨスタトに……」
私は火傷の痕も生々しい右の額を撫でてあげた。服を掴むジルの手に力が込められる。ニレ人の白い肌は暗がりの中で不思議な青さをもって浮かぶ。ジルはまた、震える声でヨスタトを呼んだ。何度も、何度も、時おり愛称になり、そのたびに苦しそうにして、伏せた目の端から新しい涙を流した。
「消えたりしないって言ったのに。あれは約束なんかじゃなかったんだ、ネル、ヨスタトを探してくれよ。俺、あいつなしじゃつらいんだ。ツァーレク、レク、会いたい、会いたいよ。声が聞きたい。レク、どうして俺を置いていったんだよ。どうして……」
ジルは激しくしゃくりあげて、咳き込みながら縮こまった。寒そうに。私は汗ばむほどなのに、痩せた親友は身体のどこも冷たかった。たまらずに抱きしめてあげると、こわばった指がおずおずと私の背中を撫でた。肩が濡れるのを感じながら、私はまた後悔の念に襲われる。私の中途半端な優しさはいつも彼を傷つけていた。
「みんな嘘つきだ、兄貴も、レクも……みんな俺を置いてく、大丈夫だって、心配ないって笑いながら。ネル、俺も一緒に、いきたかったんだよ。ヨスタトの、隣で」
私は八つ当たりでしかない怒りと身勝手でしかない哀れみで、どうしようもなく苦しくなる。私はジルと一緒になって同じ言葉を繰り返す、どうして、どうして、どうして……