「くそ、寒い」
分厚い上着とマフラー、手袋に毛糸の帽子まで着込んでいるくせに鼻の頭を赤くして震えているヨスタトの姿に、俺はげらげら笑いだしたくなった。実のところ笑っていた、寒がりながらも雪あそびに付き合ってくれる優しく同居人の精神に配慮してげらげらとまではいかないが、少なくともこの楽しさが向こうに伝わるように、俺は軽く声をたてた。高い建物の間で跳ね返り響いた音は、透き通った冬晴れの空の果てまで飛んでいく。俺たちは目の眩むような新雪に無遠慮な足跡をつけ、長靴の隙間から入り込むそれで靴下を濡らした。ヨスタトはぶつぶつ悪態をつきながらも、合間に「どのくらいの大きさにするんだ」とか「二段か?三段か?」とか「飾りはどうする」などと質問した。乗り気でなくても一度手を出したらきちんと仕上げるのが彼のいい所で、そこが好きだった。この暮らしにしたってそうだ、安月給でも仕事を見つけ、貧乏でも雰囲気のいい部屋を整え、家事当番といくつかのルールを取り決めて、生活を作りあげた。興が乗れば愛してくれるし、貴重な休みにバカを言い出しても付き合ってくれる。俺はというと、酔って帰ってきたヨスタトの世話を焼いたり、家の中で煙草を吸わせてやったり、たまの休みに寝こけている彼の当番を無視して家事を片付けたりすることでなんとかバランスを保っていた。負担のバランス。俺の要求ばかり押し付けていては彼が疲れるし、俺も我慢しすぎると体に毒だ。バランス、バランス、何事もバランスが大事……雪だるまもそう、つりあいを取るのが鍵なのだ。ただ、ある程度予想はしていた通り、極低温の大気がこしらえたパウダースノーはうまく固まってくれなかった。雪を集めて押し潰し、無駄な努力を繰り返す俺に向かって、ヨスタトはこう提案した。遊びを変えないか? じゃあ何を、と聞き返す間もなく、俺の肩で雪の粒が舞った。マフラーの隙間に入り込み、ぬるい水が肌を湿らす。なるほどな、とさっきまで頑張っていた不格好な雪玉をヨスタトのにやにや顔に向かって投げつける。真正面から放ったそれは当たらないが、空中で崩れた粉が降りかかる。寒がりの子供みたいな姿だが、ヨスタト、なんて男前なんだ。ぼんやりした俺の顔に次弾が命中する。全く痛くないが、兄貴が居たら怒っただろう、お前それでも俺の弟か。そうだ、やられっぱなしじゃカッコつかない。その決意で投げた二球目は見事ヨスタトのマフラーを真っ白にした。あとはもうめちゃくちゃだ、手当たり次第に雪を掬って投げ合い、雪まみれになって笑い転げる。すると両脇の棟のどこかから、うるさいぞバカ、が飛んできた。いい歳してこんな遊びに興じる俺たちはなるほどバカに見えるだろう。それがおかしくてまた笑うと、ヨスタトもいっそう大きな声で笑った。さっきと同じ声で、いかれ野郎が、が投げられる。