ニレの若やいだ初夏の陽が柔らかな緑に覆われた草原に降りそそぎ、俺はシャツを膨らます風を心地よく思い、吹かれるままにそこに立っていた。地平線は彼方で森や山脈の稜線にかき消されている。まっさらに開いた空の青は、まだ軽やかな薄水色をしていた。その薄水色と綿を千切ったような雲を背にした丘の上、俺はよく知る二つの人影を見つけた。ミレーネとジルナクが、手に手をとって踊っている。みずみずしく茂げる幼い葉は裸足の下で折れず戯れ、二人は気ままにステップを踏んだ。はにかむように頬笑み、時折くすくすと声をたてては、いたずらっぽい視線を交わした。ジルナクの指先に触れて、ミレーネがくるりと回った。ミレーネの手をゆるく握り、ジルナクが前後に足踏みした。二人は幸せそうだった、この世に憂いなどないかのように。二人はいつまでも踊った、そうして俺はミレーネとジルナクを、鼻腔をくすぐる和やかな生命の香りを、あたりを淡く満たす光を、ただ遠い夢のように感じていた。そんな夢を見て起きた朝は大抵まだ日が夜の淵から顔を出しておらず、朝焼けを待つ氷点下の部屋の底で、なくした左足がどうしようもなく痛んだ。