「おや、これが噂の」「そうなるな」
きみは失礼にならない程度にじっくりと、客人の容貌を観察しているようだった。今日のお客はわたしの風変わりな友の中でも目立つほうで、彼は丸太のように太い腕を組み、窮屈そうに上着の布地を膨らませていた。
「それで? ご感想は? こういう所に住んでいるんだ、シャミーズやミジェットとかには慣れたものかもしれないが、僕みたいなのはちょっと珍しいだろ?」
“半分男”は茶目っ気たっぷりにウインクした。この愛想が彼をスターにした。「礼儀正しいね、普通はもっと熱い視線をくれるんだが」
わざとらしく眉を上下させる芸人に対し、きみは控えめに肩をすくめてみせた。
「人付き合いは不慣れなもので」
「まあいいさ、テントの外じゃ物見高い観客よか友の視線のほうがずっと快い。君もこちらに来て歓談の輪に加わってくれないか。この性悪貴族の悪口が山ほど聞きたい」
「これなるお方はわたしの罪ならいくらでもご存知だが、罵倒の語彙はからっきしでね。それに愛するわたしを悪しざまに喧伝したりしないだろう? おお、麗しのロス・イリングワース、そうだと言ってくれ」
きみは目にごみでも入ったかのように顔をしかめた。もっとも、口元は朗らかに緩んでいるのだが。
「このばか者には手を焼かされる」
「それ見たことか! あんたはこういう人からも『ばか者』の一語を引き出すに十分な資質をそなえているわけだな、ハハ!」口の減らない半分男はよく通る声をはり上げて笑った。「僕もここで働こうかな。どんな愚かな男かを間近で見てみたい」
「まさか。きみは今の仕事のほうがずっと稼げる」
「本当に?」
「彼はしたたかで強欲だ。こういう気質が合わされば貯まるものも貯まる」
「そりゃそうさ、立派なモノを持ってるからな」
この下品で不謹慎な冗談へ、きみは存外に人懐こい笑みを浮かべた。それは決して出来の悪いジョークが気に入ったというわけでなく、飾らないわたしの友人が気に入ったということだろう。わたしに輪をかけて不愉快な放蕩の奴輩に引き合わせる気はないが、遥かにましなこうした連中となら、もっと交流を持たせてやったほうがいいかもしれない。いつまでも独り占めするのはよくないし、それにわたしはどんな人気者と並んでも、彼のお気に入りで居続ける自信がある。