わたしは部屋に戻り、寝台に腰掛けたまま、落としてきた足跡を拾い集めた。確かまっすぐにここへ帰ってきた筈だ、彼がわたしの罪を暴きたててから。視界は波打ち歪んでいた、質(たち)の悪い薬を質(しつ)の悪い酒で流し込んだ時のように。わたしは身をくの字に折り曲げ、顔を覆った手のひらに恥辱が満ちるのを感じた。信じられない、信じられない……彼の言葉が繰り返すたび汗が吹き出る、惨憺たるありさまではないか、いかさまな手品師が客のために用意したあけすけな罠を飛び越えられて、本物の仕掛けを当てられるあの間の悪い一瞬、それが永遠に引き伸ばされてわたしの首を締めあげている。きみを見くびっていた、わたしが仕込んだ暗がりへあれほど容易く踏み込んで、こともなげにランプに火を入れる、それから紐を引き、けばけばしく飾りたてられた天幕はあっけなくばらけてしまうのだ、きみが正直であることをこれほど恨んだことはない。初心な若者に劣情を催させる低俗な含み、それ以上に露骨だったとでもいうのだろうか、婀娜な“わたし”の肉体に、淫らな快楽を与えるきみの姿は?
あらゆる神々のすべてに誓って、わたしはきみと情を交わすことを夢見ているのではない。ただ、わたしが捧げる愛というものが、あの侯爵夫人が若い情夫とではなく年老いた夫とまぐわう時にみせたそれと、同じ種で孕んだ子かと恐ろしがっているだけだ。この不義の子の揺り籠に手をかけ、首をひねるべきか乳を与うべきかを迷いながら、健やかな寝息に怯えている。あんなふざけた絵など描くべきではなかった、わたしは虚しく後悔し、悔悟し、懺悔する、きみに何もかも知られてしまった。