男は跪き、寝台の上へ革手袋を並べた。乳飲み子を寝かすように、ごく慎重で愛情ぶかい作法だった。くたりと柔い歪みを示し、親指が向き合った。男は自らの手を手袋に重ねた。左のほうは中二本の指を欠き、あるはずの指を置き換えた空白は、深い裂け目としてそこにあった。夕さりの闇を揺らす甘い溜め息が、色のいい唇の、その後ろに隠した尖りすぎの白い歯、わずかに開かれた噛み合わせの間隙から、ある種の憂鬱を伴い吐き出された。彼の友人はこの男の野蛮な牙の並びを愛し、出来損ないの左手を愛し、この畸形の身に具わったあらゆる欠陥を愛した。隣人を愛せよ、汝の敵を愛せよ、最も堕落したものたちが最も熱心に救いの列に並び、荊を踏んで誠を示そうとする。男は頭を垂れた。色ちがいの瞳が白い瞼の裏へ隠され、赤錆色の髪は優美な曲線を描いて頬に落ちかかった。じき夜は天球を満たし、暗幕へ縫い止められた幾つもの神話が力を取り戻す筈だった。男はまなうらの不完全な闇へ、友の姿を描き入れた。彼の唯一の信仰は呪わしい伝承の怪物に連なるひとつ、まなざしに祈りを、唇に歌をのせ彼を祝福に現れる。