別れ

 わたしが弾き、きみは歌った。いつも通りの夜だった。フィドルの音色は機嫌よく寝室の壁を跳ね回り、厳かとさえ言える静かな歌声がその後ろで舞っている。彼の好きな曲を片端から奏でた。歌は小節を越えるごとに痩せ細ったが、きみはよく頑張っているようだった。今夜は特別だ、われわれを含めた誰もこの遊びを咎めない。二人で気に入りにしていた小鳥がどうとかいう曲をやっている最中、きみの歌は途切れてそれきりになった。わたしは弓を動かすのをやめなかった。しかしやがて終わりは来るもので、屋敷には夜にあるべき沈黙が訪れ、弱りきった小鳥はわたしの元を去った。