過ち

 ラファエルが人を殺した。
 僕はそれを人づてに知り、不謹慎な伝書鳩を笑い飛ばそうか殴りつけようか迷ってどちらもやめにした。その代わり彼に電話をかけて、気の抜けた留守電メッセージを延々と再生した。二日経ってようやく、録音でない彼の声を聞くことができた。憔悴しきった様子が目に浮かぶようだった、いつものとぼけた陽気さは成りを潜め、憂鬱と疲労に沈みきっている。ラフ、大丈夫か? いいや、全然。
 彼の話によると、悪い噂は真実だった。彼の人生をめちゃくちゃにしたあのモデルは、今度こそ完全にそれを破壊してしまったらしい。どうして、という問いを何度も飲み込んだ。どうして彼女の部屋に行ったりしたんだ。どうして薬なんかやったんだ。どうして銃なんか持っていったんだ、どうして、彼女を撃ったりしたんだ。きみの震える手で、何キロも離れた場所にいる僕らの間に淡々と事実が並べられた。ありふれた第一級殺人。彼はB級サスペンスのあらすじをこう締めくくった、こうするしかなかったんだよ、クリス、僕は変われない。
 過去の過ちは君を追いつめ、ついに破滅させてしまった。彼は忘れることができなかったのだ、乱れた視界の中で揺れる彼女の微笑みを。僕と居るときも……