塀の中

 クリス、また来てくれたのか。いや、言うほど痩せちゃいない。うまくやってるよ。最初のうちはかなりきついこともあったよ、正直。でもさ、僕の映画が好きだってやつが居てさ。そいつが結構、顔がきくんだ……うん、大丈夫だって。平気だよ。これはそんなんじゃない、ちょっとした喧嘩だよ。僕の煙草をあいつが取りやがったからさ。いいや、別に吸わないけど、あるといろいろ便利なんだよ。やばいな、これ聞かれてるから。いいよ、いい。気にしないでくれよ。さっき言った奴のお陰で友達も増えたよ。みんな僕のファンになった。本当さ、君のファンもいる。別に気にしてないよ。気にして……なんだって? 仮釈放? そんなのまだに決まってるだろ。それに申請もしない。しないよ。クリス、僕、ここから出るつもりはないんだよ。分かってくれ。それにさ、クリストファー。もう来ないでくれ。君があんまり頻繁に来るんでさ、疑われてるんだよ。分かるだろ? ここじゃそういう奴は嫌われる。だいたいさ、君を見てるとつらいんだよ。君の顔なんかもう見たくない。いいか、二度と来るな。この野郎、黙れ、もう帰れよ。消えろ、消えろよ、苦しいだけだ。さよなら。