「ふざけてんのか? この僕に命令なんて」
「ラフ、僕は酔っぱらいとは寝ないぞ」
「君こそ酔っぱらいの癖して!」
そうとも、クリストファーは酔っぱらいだ! 僕の家のソファの上で(最近カバーを変えた。素敵なふかみどり)家主に組み敷かれた彼は、色気もクソもないただのTシャツなんか着ている割にこんなだし、僕は生唾を飲み込んでもう一度彼の首筋にキスしようとするも、もう一度あのつれない拒絶の押し返しが入り、君みたいなちゃらちゃらした男、とかなんとかいうのが続いて僕は激しく……そりゃ猛烈に……苛立った。酔っぱらってベッドに入ることなんて今までいくらでもあったし、今さらなんだってんだ、恋人がこんな最高においしそうな姿でふにゃふにゃ笑ってるっていうのに放っておくバカがいるなら、今すぐそいつは修道院に行って坊さんにでもなるべきなんだ。普段は青白い彼の肌は一時間も走り回ったおてんば娘よろしく健康的に紅潮していて、キザ野郎なら何か洒落た花にでも例えるんだろうけど僕にとっては張り切りすぎのうちの妹か、でなかったら熟れかけの桃の皮って感じだ。そむけた顔は悩ましげにしかめられ、目尻にはアルコールが滲ませた涙が光って見える。こういう顔をさせたいと思う監督がいなくてよかった、これは僕だけのものにしておきたい。
「ラフ……」掠れた声。「こういう状態で君と寝ると明日が怖い」
「なにが」
「朝になって、君にしたことやさせたことを思い出すと……」
僕は呆れかえった。「そんなことかよ!」とはいえ彼が非難げに何か言い返す様子なのできちんと言葉を重ねておく。「もちろん、分からないでもないよ。率直に言って君は変態だし、おい、怒るなって……君は変態だし、僕もどうかしてる。でも僕は喜んで──されてるし──僕も──喜んで──してるから──いいだろ! おい、いてっ、なんだよ!」
僕は思い切り押されてよろめき、その隙にふざけた酔っぱらいは僕の下から抜け出した。素早くしなやかな身のこなし! と思うと腑抜けの僕に掴みかかり、いとも簡単に押し倒してさっきと逆のかたちになる。オー、いい景色だ。君はこういう時、黒豹みたいに見えるって知ってる?
「ラファエル……それなら僕はこっちのほうがいい」
「そうだね、僕もこっちで悪くない」
この手のつけられない肉食獣は早速獲物の喉笛に噛みついた。なまくらな彼の歯は刺さりはしないものの結構痛くはあった、でもせっかくやる気になってくれた僕のモンスターのお楽しみに水を差したくはなかったし、気分は全く悪くないので、僕はわざとらしく呻いておいた。ウー。