普段はあまり感情を表に出さない恋人が、乱れた髪もそのままに、淡く色づいた頬をシーツに擦り付けて理性を忘れ、ただ肉体的な快楽を乞うその時間を、Kは知に遊び行間を散歩する授業の時と同じくらいに愛していた。なぜなら彼はZのそうした人間らしい二面性が好きだったし、単純に可愛らしくも思っていたからである。つまり溺れるほどいいのだ、と思うたび確信は彼の獰猛な部分を満足させた。うなじへ口づけ、肩を押さえて彼をより深く責めようとしながら、ふと数時間前に教師を笑わせた拙い詩を思い出した。君はかわいいライラック……
「K、集中してくれ」白い身体が不満げに動いた。「それにそんなものは詩とは言わない」
「いいや、僕のかわいい人、きちんと集中しているしあれは詩だ。君のことを想う言葉は全部そうなる、違うかい?」
「そ、それなら」揺れに合わせて声は上ずって掠れた。「大した詩人だよ。韻もろくろく、ああ、踏めないくせに」
それからしばらくは不規則な呼吸と意図せず洩れる呻き声、それに寝具の軋む音だけが部屋の空気を震わせた。ふだんペンを握り他人の罪を書き記すZの右手は、最後にシーツへ空しく皺を寄せ、姿勢よくまっすぐに保たれている背骨は弓なりに反った。やがて行為に区切りがつくと、Kは自身を落ち着かせるため、独り寝室を出ていった。残されたZはほのかに汗ばんだ肌を労るように愛撫するKの手の平の感触を朦朧としかけた頭の中で反芻し、そしてはっきりと意識した。
『俺は男に抱かれたんだな!』彼は床に手を伸ばし、掴んだ毛布を引っ張りあげてくるまると、暗がりでゆっくり二度まばたきした。初めて生徒と肌を重ねた夜も同じ事を考えたものだった。『それも親を持たずに育ってきて、言繰りの作法も知らないような男にだ。一体誰の筋書きでこうなったんだろうか、あるいは下手くそな詩のせいかもな。俺は自分で思うよりずっと、愛の言葉の選り好みはしないらしい……』
すっきりして戻ってきたKは寝具へ潜り込むやいなや恋人を抱き寄せ、耳元に唇を寄せこう囁きかけるのだった、