ロザイア・ベルツンは命を狙われることに慣れきって、もう暗殺者の刃やら紐やら毒やらには彼の安寧を揺さぶるのにさざ波ほどの力も持たなかった。会食の合間、議員連中の御用達のレストランの三階のバルコニー。同席者達の上等な脂に濡れた唇から発せられるへつらいを洗うのに、夜風はこの上なく適当だった。彼は肺を膨らませ、緩ませを繰り返し、有機物の臭いで濁った空気を入れ替えにかかった。あとどれくらいこの茶番に付き合わなければならないか、あとどれくらいすれば旧世界の魔法使いを除ききってしまえるか、浮き上がる考えはどれも憂鬱きわまりなく、造り物じみた男の眉間にごくささやかな影を加えた。ロザイア、あらゆる奇跡に見捨てられた後の世で最も力ある一族の長子は、夜闇の内にあって衣擦れの音ひとつ立てず忍び寄る姿を一瞥もくれず退けた。生命を失った肉体が木偶人形の作法で斃れ、二歩ののちには首を掻き切るはずだった凶器が虚しく床へ転がった。死を飼い慣らす魔法使いは、深く長い息を吐いた。こうして溜息を溢すたび、魂の一部が削り出されていくようだった。死骸を処理するほうが身を守るより遥かに煩わしく、労を要する作業だった。