おまえは悪い方へ、悪い方へ変わっていくね。でもそれでいい。誰もがそう望んでいるんだよ。あの人はそう言いました。あの人は言いました、おまえは悪い方へ変わっていくね。あの人は何度もそう言って、わたしはそのたびに視線を巡らして眺めました、ガラスの向こう側の夜を、燦然ときらめく全ての光を。照明の加護もなく闇深いこの部屋であなたは言いました、おまえは悪い方へ変わっていくね。あの光の一つ一つが人間の命と繋ぎあわされていて(まるで蛙に豆電球をつなぐよう)、そのうちどれほどが守る価値のある命だかおまえは知らない。だがそれでいい、知ってしまったらどうしてあちら側の同じ光を、根こそぎにむしりとってしまえるだろう? 適切な答えを持ち合わせないわたしは沈黙の真下、すばらしい物語のあとで夢を見損ねた子供のように、口をつぐんで立っていました。あなたの瞳はざらついたナトリウム片の灰色、あなたの頬の下では36℃の濃い血液が規則正しく命を刻み、あなたの爪の先で遠い国の恋人たちがつぎつぎに壊れていく、安らかに憩うあなたの革靴は昔生きていた動物の膚……
「あなたは人殺し」
 あなたはたっぷりと時間をかけ、唇の端と端とを持ち上げて満足そうに溜息をひとつ、そしてあなたは言いました、おまえは悪い方へ変わっていく……