まずしっかり血を抜くときみの顔はみるみるうちに出来の悪いシリコンの恋人になってしまう、元から血色がいい方じゃなかったが、あまりにも鮮やかに褪せてしまう(この表現はふざけている)ものだから、上下の歯のあいだから失礼な笑いがまろび出た。趣味の悪いヒップホップをBGMに、意外にごつごつしたきみの手首と足首はむなしく切り離されてバケツに入る、首に刃をいれて正しく動かしてやれば首もごろりと転がって別のバケツに入る、あともうひとつ気にくわない部分を除いてやって(人によってはメーンディッシュに据えるほど執着するが、おれはこういうのはまったく、腹の底から、気にくわない)、そしたら次はきみの適切な位置に切れ目を引いて、丁寧に刃を差し入れて剥く、丁寧に転がして剥く、するとどんな夜にも拝めない純粋な裸身のきみができあがる。きらきらした薄い脂肪の層と健やかに色づいた肉、それぞれの部分を分かち、それぞれの始まりと終わりを骨とつなぐ真珠のような光沢をまとった清い白。脱け殻はまた違うバケツに放り込む。融けかけの雪が春になぶられて落ちたときの湿った低音が、暢気な樹脂の底を叩いた。下ごしらえの結果を眺める。きみの身体つきがどれほどしなやかで完成されたものかよく知っているつもりだったが、チリチリ痛む腰をさすりながら俯瞰してみれば、この一個の芸術に真摯に向き合ったことなど一度たりともなかったのだと思い知らされる。四十億年の偶然が積み上げてきた仕事は完璧なもので、どこにいるのかも分からない創造主へ、感嘆と賛辞を捧げたくなった。再び膝を汚しかがみこんで、最後の仕事にとりかかる。ナイフから脂を拭い、きみの自前の剣の切っ先から下、やわらかく無防備に引かれた白線を慎重になぞる。きみの中身が享受すべきでない外界の光を待ちわびて身じろぎするのをはっきりと感じる。この工程はきみが誰よりうまかった、鮮やかな手並み、誰ひとりとして無様に傷つけたことはなかった……白昼夢の間に指をさし入れ、初夜の不器用ないたわりでもってきみの前を拡げる、きみを生かしていたものたちのなだらかな輪郭、大人しくひとかたまりに、整然とあるべき場所に納まって、ひときわみずみずしく目を引く一部は、ときおり豪奢にうねるひだを悩ましくくねらせて歓待する。そして遅れて鼻腔をくすぐる、むせかえるような“中身”の香り。心を酔わせ、胃袋を痙攣させる不快な香気、漂ってくるそれを何度も吸い込むそのたびに、胸の内が文字通りきみで一杯になる。無限に分割された幸福な時間が60のうち3だけ流れ、次のステップを踏むときが来た。続くどんなステップも、いつかパブで踊ったあの日のまま、軽やかにこなすことができるだろう。うきうきした気持ち、浮かれた鼻歌が、ラジオの伴奏とちぐはぐに混じりあう。おれがこんな生臭い嫌われものを生業として選んだのは、自分の手できみの死体を処理するためだ。きみは無駄なく肉になる。きっとそれほど旨くない。