罪が追いかけてくる。私は母を殺した。母は醜悪で、幼い妹を虐げるばかりでなく、パンひと切れと引き換えに自分の娘を他人に差し出すような下劣な女だった。あるとき私はこれを打ち倒し、妹を救わねばならないと決意した。しかし行動を起こしたときには妹の精神は肉体の荒廃と歩みを同じくしており、万人に用意されたあの無慈悲な安らぎの淵へと落ちかかっていた。骨と皮ばかりになった妹はまだ温かい母の体に寄り添い、血だまりに我が手、我が膝を浸してこれを哀れんだ。私は短刀を握る腕を下げたまま、やつれ果てた少女が無垢な笑顔に涙を添えて、自分を破滅させた魔女の喪に服すのを眺めていた。それから二日とたたずに妹は死んだ。私が施してやろうと思っていた贅沢のひとつも受け取らずに。それからしばらくして、流浪の身となった私は戯れに連なった祭りの場で台座より聖剣を引き抜き、王の命を受けて魔王討伐の旅に出た。私は正義と徳の体現者として魔を祓い、悪を斬り捨ててきたのだが、魔王を屠るあの一瞬、他者の心を我が物のごとく見通す彼の者が放った一言に、打ちのめされたままでいる。凱旋のパレードに舞う紙吹雪と、かねてより暗黙のうちに定められていた美しき王女との結婚が、私の首を緩やかに締めあげた。罪が追いかけてくる。居並ぶ民衆の眼差しは曇りなき賞賛を捧ぎ、善なるものへの熱烈な信仰を、馬上の勇士へ示していた。私は恐ろしくなった。姫は彼らと同じものを私に差し出した。天上の宝珠を欺く彼女の瞳の中に、私は短刀を握りしめた殺人者の姿を見ている。私の足下には罪深く醜い女が倒れ伏し、そこにすがりつく聖女は決して、私の罪を赦しはしないのだった。