またしてもばからしい十九日目、僕の心は揺れている。

 またしてもばからしい十九日目、僕の心は揺れている。やったらいいか迷っている。やめたらいいか悩んでいる。僕の飛行機がこの山のこの絶壁のこの巨鳥の巣に引っかかってから十九日、僕は鳥に間借りしている。翼長おそらく一〇メーターはあろうかというでかい鳥、まとう色は岩壁と曇天によく馴染むグレー、くちばしは肉を引き裂くのにちょうどよく、力強すぎる鉤爪とあわせればまごうことなき捕食者の装備。はじめはオヤツにしかなれないと思ったが、幸いにも向こうからすればそうでもなく、僕は友達なのか子供なのかは不明なものの、おこぼれをもらいつつぬくぬくとここで生き延びていた。ちまちま直していた飛行機は直った、さっさと戻りたい。でもでも、と振り仰げば大きな友達が不思議そうに首をかしげた。僕は仲良くなりすぎたのだ。どうせ死ぬまでこうしてなんていられないのに、エンジンをかける勇気が出ない。壊される心配がないのは、一緒に飛び回って遊んだから実証済みだ。乏しい燃料を無駄遣いしてそんな風にはしゃいだせいでチャンスはおそらく一回きり、やっぱやめたと戻れるでもなく、それが決断を鈍らせる。またしてもばからしい十九日目、僕はばからしく、すべてを明日に延期して寝た。