弾圧は日に日に強まり、私たち家族も恐怖と警戒とを携えずして外出することはもはやできなくなっています。遊び尽くした庭のように仲良しだったどの路地も、今はどれも手ぐすね引いて獲物を待つ箱わなのように見えます。近所でも物を売ってくれない店が増えてきました。覚えておいででしょうか、トエクスとミルファがもっと幼い時分によくあの子らの面倒をみてくれていた靴屋のダノ・ラァとルース・ラァの夫婦のことを? あのふたりは排除命令が出てからも随分良くしてくれましたが、十日ほど前、遂に私たちを共同体から締め出そうとする壁板の一枚に変わってしまいました。ですがどうか彼らを心の冷たい人たちだなんて判断なさらないでね、大穴の空きかけたトエクスのズックを見て、ダノ・ラァは確かに、涙を流さんばかりに目を潤ませたのですもの。
斯くして平和は成る、と転換期の詩人ヤン=ウ・ダソッ・タは唄ったものですが、私たち家族はあるひとつの平和のために排除されるべきもうひとつの平和でした。私たちが雨漏りへ端切れを詰め込んでいる間、小さなミルファをなぐさめようとトエクスの灯した七色の火は、一体誰を傷つけられたことでしょう? あの無害ないたわりが、お兄さんらしい心がけが、ついに袋小路へと追い詰められた私たちに、警告と冷遇以上のものをつきつけることになりました。
お恨みにならないでね、きっとあの素直なやさしさで諌めてくれる私のかわいい子たちも、いまはここには居ないんですもの。もしあの日、あなたが自分の納屋に火をかけるなどという馬鹿な真似をなさらなかったら!私は決して、折角のすばらしい才能を破壊や脅し、そうした乱暴な行いになど使わなかったことでしょう。クウィン・ラは刃の握りかたを教えてくれました。私はそれを振り下ろすことに、何ら躊躇いを感じていないのです。