旧き者

 これは未来だ!

 未来というやつにおれは滅ぼされるのだ。カヤナタワ・ロォは内に兆した想念に身を引き絞られる思いだった。ひび割れたアスファルトの間から押し隠されていた生命が吹き上がるこのカドーリシ通りの小指の先で、恐れは彼の背骨を残らず数えあげ、その桁に応じた罰を(決して一桁に留まらず、二の数を伏し目見ることはない)用意していることが明確になった……ロォのトランシーバーの角が砕け散る音でだ!彼は重錆びた瞬きを二回した。魔法使いは美しい貌を美しく歪めた、口角は全くの対称を保ったまま唇の曲線に上弦を張り、輝くばかりに色を排した皮膚の覆うた薄い筋肉と脂肪の層が緩やかに連動して微笑のかたちを造る。そこに嘲りや憐れみの香は漂わず、歓喜や愉悦の一筋すら過らなかった。ラ=クウィン・ラは旧き名に其が名を連ね神話の一節に乳を離れた最古の魔法使いだが、同時にこの閉ざされた国で息づく全ての人の子の行く方に或る線を引く未来だった。トーワ・ロォは胸に沸き騰がるものが何かを判じえなかった、それが彼以外のものの手で変質させられ実体を得るのを予感したから、幻素の凝集と炸裂、決定的な破壊の前に彼は噛み締めた歯を激しく軋らせた、二桁に決まっているのだ、二桁に!