カザレク・オドノゼ

「僕らはあの議員連中……わけてもベルツンの人間のような暮らしは決して経験できないだろう?やつらの飲み残したスープのひとすすりすら一生ぶんの贅沢になりうる──そこで終わりになるかもしれないという可能性を含めてね。魔法使いでさえそうだ、本当ならどんな富を生むかも知れない全ての才能が、いや、ほとんど全ての才能が、お日さまを避けてごく小さな満足を生み出すのがやっとという有り様さ……」
「成る程、だから君はお日さまの下で大きな満足を生み出しているという訳だね」
 質素ないち住宅のダイニングの、背凭れもない木椅子に腰掛け、テット・シュラクは微笑んだ。彫刻じみた完璧な均整をそのままに、薄い筋肉が理想を外れぬ連動に皮を吊り、不必要な皺のひとつも作らずに旧い魔法使いの、弟子に対する親愛と愉悦を示した。弟子は伸びすぎた身丈を屈めてはいたが、窮屈そうなところはひとつもなかった──彼はやはり伸びすぎてやや奇形の感もある両手の指と指とを向かい合わせに遊ばせながら、師へ笑みを返した。人懐こさと心からの歓待に満ちたそれは、一度彼の導き手によって破壊されたことがあった。爆風と熱線は一撃のうちに骨を砕き、剥き出しになった血と肉と髄を平等に焦がして、おおよそ半分軽くなった男の身体を、傷ひとつない路面へうち倒した。その瞬間を、はじめの教えを、“魔法のように”治された後のカザレクは決して忘れなかった。炸裂する力、決定的な破壊、爆発という彼の才能は、あのときにこそ、より洗練された創像の種子がもたらされたのだった。