くだらない笑い

 バランダール・デアン・トルゴーは静かに息を吐いた。窓の外は相変わらずの雪景色で、四角ばったクリーム色のアパルトメントが、雪をかぶって、どことなく美味しそうな姿で並んでいた。ダールはこういう冗談めかした情景が好きだった。この間はかなり愉快だった、議会の終わり、恰幅のよい禿げ頭が示し会わせたように集まって、一人がそこに加わった瞬間にそれらが一斉にばらけて出ていった。玉突きの馬鹿げたパロディ。失礼な笑みを頬をさすって誤魔化していると、向かい側の次席議員補佐が目にとまる。緩やかに弧を描いた唇に指を沿わせ、両の瞼を和らげて、ささやかに肩を震わせるその姿。笑っていた、普段は必ず滲ませる蔑みや嘲りの色もなく。あの毒蛇も笑うのか。ロザイア・ベルツンは子供じみた仕草を払うように首を振った。瞳の青緑に冷ややかな軽蔑が戻る。無駄のないしなやかな身のこなしで席を立ち、熟練の繰り師が操る人形のように美しく揺るぎない足取りで歩み去った。
 ベルツンの長兄が自分を見るときの敵意と挑発と侮りと憐憫、そこに時おり混じるものが何かを、バランダール・トルゴーは長い間掴み損ねてきた。憎悪の領域を探っては無意味に終わった探索の傷を撫で、いたずらに手をのべてはその偽りの代償を払ってきた。そしてあのくだらない喜劇の幕間に全て明らかに悟ったのだ、彼の眼差しを揺らすもの、紛れもなくそれは無邪気で無垢な憧憬そのものだった。