ある末路

 まだ温かいイラレイナ・トォの身体を抱いて、魔法使いは深い溜め息をついた。この美しい娘の恋人は、これを見てどんな顔をするだろう。悲しみ?それとも怒り?絶望?分かりやすい表情に違いない。魔法使いが知っている彼は、ごく単純な男だった。楽しければ笑い、憎ければ敵を睨み、納得のいかないことには苦虫を噛み潰してみせる。納得。彼は納得するだろうか。死んだ女の唇は蝋のように艶やかな白い肌にかこまれて益々紅く色づくようであるし、豊かな黒髪はやわらかな曲線を自在に描いてその頬を、首元を、魔法使いの腕の上を、流れ落ちていく。彼女の黒と魔法使いの黒は違った。彼女のはよく煎ったコーヒー豆のそれ、毎朝の食卓を花瓶に活けたブーケと愛とで満たしてくれる色で、魔法使いのまとう色は人々の脳裏に彼らが流させた血のことを思い起こさせる、不吉で不愉快な色だった、執行人はその外套を罪なき者の血で濡らす。ゾヨイヤ・ベルツンはまだ温もりを宿した女の身体を抱いて、深い溜め息をついた。